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バトンをつなぐ想い

新潟県長岡市のアパレル衣類修整のプロ集団、山田修整有限会社社長の吉田です。「衣料品修整」=納品トラブル解決をサポートする経営者の立場から考えることを中心に書き留めています。

 

2023年9月に次の話題がニュースになりました。『1904(明治37)年創業で、国内外で高い評価を得ているマフラーブランド「KNITTING INN(ニッティングイン)」を展開する松井ニット技研(群馬県桐生市本町、松井敏夫社長)が2024年2月末をめどに廃業することが分かった。群馬県は「世界的ブランドの灯を消さない」ため、本年度から取り組む事業承継のウェブサイトを活用し、同社の独自技術や機械を譲り受ける後継者の募集に乗り出す。』

 

ぜひとも継続してもらいたいと願う者のひとりでしたが、どうやらそう簡単にはいかないようです・・・。最近になって、もう少し時間をかけて後継者を探すとの発表がありました。

 

松井技研ニットの事例から、事業承継における成功要因や課題を考えてみましょう。

 

まず、成功要因としては次のような点が挙げられます。

・他社にはない強みや特殊性を持った製品を提供し、高い評価と信頼を得ていた

・経営者の子どもが入社し、新たな事業を立ち上げ、会社の刷新と成長を遂げた

・美術館・企業・スポーツチームなどとのコラボレーションにチャレンジしたと

・SDGsにも取り組み、社会貢献活動を行ったこと

 

一方で、課題としては次のような点が挙げられます。

・後継者の育成や選定に時間的な余裕がなかったこと

・後継者に必要な資金や機械の移転などの調達が困難だったこと

・後継者に魅力を感じる経営ビジョンや戦略が明確でなかったこと

 

これらの課題を克服するための次のような打開策が考えられますが、とても他人事とは思えません。

・早めの準備と計画的な取り組みを行う(60歳頃には準備に着手)

・後継者の選択肢を広げる(親族だけでなく従業員や第三者も視野に入れる)

・後継者の育成や支援を行う

・後継者に事業の魅力や将来性を伝える

 

事業承継は、経営者の意思や想いだけでなく、後継者や関係者の理解や協力も必要なプロセスです。 事業承継を成功させるためには、早期からの準備と計画的な取り組みが重要です。

 

ここまでは一般論ですが、わたしのライフワーク「居場所づくり」という観点からすると、松井ニット技研を更生施設とするというのも、受刑者の社会復帰と技術継承の両方に貢献できる可能性があるという点で一つの発想としてありだと思います。

 

もちろん、実際には、課題や問題点も多々あります。松井ニット技研だけでなく、行政や司法、社会福祉、教育、産業などの多様な分野の専門家や関係者との協力や協調が必要ですし、受刑者やその家族、地域住民や消費者などのステークホルダーの意見やニーズも尊重することも大切になります。

 

いずれにしても、「このままでは終わりたくない、終わらせたくない」という熱い想いを持つ者同士の「ご縁」がバトンをつなぐカギになることは間違いないでしょう。